【フォートナイト】スマホでプレイを続けられる?Appleとの戦いはどう決着するのか?
2020年8月13日(木)、Google Play、App StoreからEpic Gamesのアプリ「フォートナイト」が削除された。これは単なるアプリの削除というだけにとどまらず、アプリ市場に大きな変革をもたらすきっかけになるかもしれない。いったい何が起こっているのか? ことの発端から現在までの状況を追いつつ、今後スマホでフォートナイトがプレイできるのかという可能性も見ていこう。
フォートナイトといえば、2020年5月に登録者数が3億5000万人を突破したと報告されるほどの人気バトルロイヤルゲームだ。従来のリアル路線が主流だったバトルロイヤルに、建築要素とポップなデザインや演出を加え、瞬く間に大人気タイトルへと駆け上がった。
操作性の高さからPCやPS4、ニンテンドースイッチがプレイヤーの多数を占めるが、どこでも遊べるという手軽さから、AndroidやiPhoneといったスマホでの人気も高い。
フォートナイトの登録プレイヤー数は3億5000万人を突破!4月にはみなさんがゲームをプレイした時間は32億時間を超えました 🙌🥳
— フォートナイト (@FortniteJP) May 6, 2020
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フォートナイトがGoogle Play/App Storeから削除
今回の騒動は、8月13日にEpic Gamesが「フォートナイト メガプライスダウン - 最大20%の永続割引」(以下、「メガプライスダウン」)を実施したことに端を発する。これは、モバイル版に限らずあらゆるデバイスから、フォートナイトのゲーム内通貨「V-Bucks」を恒久的に最大20%割引きするというもの。ただし、モバイル版はGoogle PlayとApp Storeからではなく、Epic Gamesの「Epic ディレクトペイメント」から購入しないと割引とならない。つまり割引価格で「V-Bucks」を購入するにはこれまでとは異なり、Google PlayやApp Storeを経由しない、Epic Gamesと直接売買をする形式になる。
AppleはこれをApp Storeのガイドラインに反するとして、フォートナイトをApp Storeから削除、Googleも同様にガイドライン違反としてGoogle Playからアプリを削除した。
これに対しEpic Gamesは、Appleの行為が独占禁止法に抵触するとしてカリフォルニア北部地区連邦地方裁判所に訴状を提出。さらにプレイヤーに対し、「#FreeFortnite」を使用して反対運動に参加するよう呼びかけるとともに、この件を揶揄する動画を公開する。
Epic GamesはApp Storeの独占に異議を唱えました。報復として、Appleは10億のデバイスでFortniteをブロックしています。https://t.co/VwLAHlzLap へアクセスし、2020年を「1984」にしないための闘いに参加してください。 pic.twitter.com/LSKyXiXQVA
— フォートナイト (@FortniteJP) August 13, 2020
現在スマホでフォートナイトを遊んでいる人は継続してプレイが可能だが、アプリストアから削除されたことで、新規にアプリをダウンロードしたり、アップデートを受けたりすることができなくなっている。そのため、8月27日(木)からスタートする次回大型アップデート「チャプター2 - シーズン4」から、モバイル版は取り残されることに(PS4、スイッチ、Xbox、Windows、Macintoshならプレイ可能)。
Appleは、Epic GamesがこれまでどおりApp Storeからの課金方式に戻せばフォートナイトを復活させるとコメント。しかしこのままの場合、8月28日(金)にEpic Gamesの開発者アカウントを削除すると予告したため、大きな波紋を呼ぶことになった。Epic Gamesはこの報復措置をやめるよう裁判所に要請中だ。
Apple removed Fortnite from the App Store and has informed Epic that on Friday, August 28 Apple will terminate all our developer accounts and cut Epic off from iOS and Mac development tools. We are asking the court to stop this retaliation. Details here: https://t.co/3br1EHmyd8
— Epic Games Newsroom (@EpicNewsroom) August 17, 2020
Epic Gamesはリアルタイム3D制作プラットフォーム「Unreal Engine」を原則無償で世界に公開している会社でもある。「Unreal Engine」はPCやゲーム機、スマホの垣根を越えた数多くのゲームタイトルで使用されているので、ゲーム起動時にロゴを見たことがあるという人は多いはずだ。
Appleの提示した開発者アカウント削除が実施されると、iOSとmacOSでの「Unreal Engine」のサポートに問題が生じ、「Unreal Engine」を使用しているゲームがiOSとmacOSから消える可能性がないとはいえない。
Epic Gamesはなぜ訴訟を起こしたのか?
なぜEpic Gamesがガイドライン違反をしてまで「メガプライスダウン」を強行したのか。そこには、Google PlayやApp Storeといったアプリストアと、Epic Gamesとの過去の確執がある。現在Google PlayやApp Storeでは、有料アプリのダウンロードやアプリ内の課金に対して30%の取引手数料を得ている。たとえばガチャを回すために1,000円の課金をしたとすると、GoogleやAppleは300円を取引手数料として得て、残りの700円がゲームデベロッパーに入る仕組み。
Epic Gamesはこの30%が高額すぎるとこれまで主張してきた。実際、Epic Gamesが自社で運営している「Epic Gamesストア」は取引手数料を12%とし、この額でストア運営が成り立っていることを証明している。
Appleは2020年6月16日、EUの欧州委員会からApp StoreとApple Payが独占禁止法違反の恐れがあるとして調査を受けている。これは音楽配信サービス「Spotify」による訴えで、30%の取引手数料によって公平な競争を阻害しているというもの。
さらに7月にはAmazonプライム・ビデオのサブスクリプション手数料が通常の1年目30%ではなく、半分の15%にするという有利な条件だったことが判明するなど、批判の矢面に立たされている感はぬぐえない。
Epic Gamesは取引手数料を不服とし、今春までフォートナイトをGoogle Playで配信していなかった。しかし2020年4月からGoogle Playで配信を開始したが、わずか4か月で今回の事態になった。Epic GamesはApple同様、Googleも提訴しているものの、そのトーンはAppleに比べると穏やかだ。
また、Android版のフォートナイトはGoogle Playで配信されていないだけで、epicgames.comまたはSamsung Galaxy Storeから「Epic Games App」を利用すれば入手が可能。一方、AppleはApp Store以外からのアプリ入手を禁じているため、完全に入手経路を立たれている状態である。ここもGoogleとAppleに対する差かもしれない。
AppleとGoogleという二大巨頭に戦いを挑むことなったEpic Games。訴状やキャンペーンの手際の良さから考えると、アプリストアからの削除や訴訟に発展といった展開は想定内であろう。
8月23日(日)、Microsoftは、AppleによるEpic Gamesの開発者アカウント削除を一時的にやめるようカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に声明を提出したと発表。Appleの措置が実施されると、Microsoftは自社を含め、多くのデベロッパーやプレイヤーが不利益を被りかねない事態を避けてほしいということだろう。
Today we filed a statement in support of Epic's request to keep access to the Apple SDK for its Unreal Engine. Ensuring that Epic has access to the latest Apple technology is the right thing for gamer developers & gamers https://t.co/72bLdDkvUx
— Phil Spencer (@XboxP3) August 23, 2020
8月27日(木)の「チャプター2 - シーズン4」アップーデートが目前に迫っている。また、翌日はAppleがEpic Gamesの開発者アカウントを削除するというリミットだ。両社が一歩も譲らない雰囲気のまま、フォートナイトのモバイル版はこのまま取り残されていくのだろうか。ここにきてMicrosoftが声明文を提出するなど少しずつ事態は動いている。ゲーム業界、そして社会が注目する訴訟がどうなるのか、3社の動向を見守りたい。